ホーム > NEWS > 日本を代表するバリトンを迎え、 「三原剛が語る『イノック・アーデン』」 ザ・フェニックスホールで上演
11月18日(日)、大阪のザ・フェニックスホールでは、バリトンの三原剛を迎え、「三原剛が語る『イノック・アーデン』」を上演する。
この作品の原作はイギリスの詩人アルフレッド・テニスン(1809~1892)の物語詩。漁師イノック・アーデンと裕福な粉引き屋の息子フィリップ・レイ、そしてアニー・リーという少女の、3人の幼なじみの運命をビクトリア朝の美しい風景の中に綴った作品だ。後期ロマン派の巨匠リヒャルト・シュトラウスはこの作品に感銘を受け、朗読とピアノのための「メロドラマ」(歌ではなく朗読が器楽とともに音楽的表現を行う形式)として完成させた。
――― 生まれ育った港町でイノック・アーデンはアニーと結婚。子供にも恵まれた彼は、家族の生活のために東洋への航海に出る。だが船は難破、イノックの生死は不明。貧窮したアニーと子供たちに手をさしのべたのはフィリップだった。やがて10年の時を経て、アニーはフィリップと再婚するが、今や幸福なふたりの住む港町に、イノック・アーデンが帰ってくる…。
素朴な物語ながら全編、敬虔な信仰と美しい抒情に満ち、日本でも多く訳されている作品だ。分けても終盤、死に臨んでアニーと家族への愛情を昇華させるイノック・アーデンの心の強さは多くの人の感動を誘うに違いない。原作は英語、R・シュトラウスの台本はドイツ語だが、今回は日本語上演となる。ピアノは緻密な表現力で知られる小坂圭太。ザ・フェニックスホールのアートディレクター、松井桂三が手がける舞台装置にも注目だ。
昨年には俳優・栗塚旭の朗読、今井信子のヴィオラ演奏という形式で、シューベルト「冬の旅」の上演を成功させたザ・フェニックスホール。今回もまた、意欲的な試みに期待したい。
●インタビュー&レポート-三原剛・小坂圭太が語る「三原剛が語る『イノック・アーデン』」-と併せてお読みください。
■三原剛(朗読・バリトン)
大阪芸術大学卒業。国内外の多くの賞を受賞するとともに、リサイタルやオペラ、オーケストラとの共演など国際的な活動を展開し、現在もっとも注目されるバリトンのひとり。1995年、ドイツ・ハーゲン歌劇場におけるヴェルディ『イル・ドロヴァトーレ』のルーナ伯爵役、2001年びわ湖ホールオペラ『アッティラ』ではエツィオ役を演じた。歌曲の分野でもバッハ、ヘンデルなどバロック期の宗教音楽を中心に古典派、ロマン派から、近代・現代作品へとレパートリーを広げ、目覚しい成長を続けている。大阪芸術大学演奏学科教授。バリトノ・カヴァリエーレ(騎士的バリトン)と評される豊かで気品あふれる声は、多くの賞賛を集めている。なお今回、三原剛が朗読する日本語テキストは、彼の師であり、日本声楽界の草分けとして知られる畑中良輔氏(バリトン)の翻訳によるもの。三原は「表現上の起伏と台詞とが見事に一体となった、声楽を極めた人のテキスト」と全幅の信頼を寄せている。
■小坂圭太(ピアノ)
東京芸術大学大学院修了。第54回日本音楽コンクールピアノ部門入選。第58回同コンクール声楽部門委員会特別賞(協演賞)。ソロ、伴奏、室内楽、オーケストラの鍵盤楽器、コレペティトゥーワなど多岐にわたる分野で演奏活動を行う。磨きぬかれた技巧と、深い表現力で常に共演者の信頼厚いピアニストである。お茶の水女子大学大学院文化創成科学研究科準教授。愛知県立芸術大学音楽学部、相愛大学音楽学部でも後進の指導にあたる。
■松井桂三(舞台装置)
松井桂三有限会社主宰。大阪芸術大学デザイン科教授。アメリカ・アップル社マッキントッシュのパッケージデザインシステムの構築およびデザインコンサルタント。政府広報(内閣府ほか全省庁)の統一シンボルマークや関西国際空港、複合商業ビル「ハービス大阪」などのシンボルマークなど多岐にわたり上質なデザインを生み出し続けている。ザ・フェニックスホールアートディレクター。同ホールの主催公演でのアートディレクションを手がけ、「三原剛が語る『イノック・アーデン』」にも陰影に富んだ、印象的なデザインを提供している。
(2012年11月 2日更新)
■松井桂三「三原剛が語る『イノック・アーデン』」(宣伝用チラシ・原画)より
〈注目アーティストシリーズ 55〉
●11月18日(日)16:00